数年前になるが、とある製品の基板の工場立ち上げに行って来た時の模様を、少しばかりではあるがお見せしようと思う。場所は中国。
自動実装機。チップ部品などの殆どの部品はこの装置で搭載する。
BGAのトレー。部品はバキュームピックアップで吸い取られて、予めクリーム半田が塗られた基板に実装される。
プログラムROMメモリー。ラベルが貼ってあっても大丈夫。
ROMは地味にギャングライターで焼いていく。
焼かれたROMはマーキングされてバージョンラベルが貼られる。
自動実装機の試し打ち。試し打ちはハンダを使わずに両面テープを使って確認。
精密測定器で、仮実装されたパーツを外して値を測定する。実装機の力加減などで、パーツに歪が生じていないかを確認するのが目的である。
この様に1005とか小さいチップ部品にプローブを当てて測定。
こちらはハンダ厚み測定器。
クリーム半田の厚みも厳密にチェックされる。ラインの立ち上げは、量産してしまえばあっという間だが、この様なセットアップに時間がかかるので通常は数週間を要する。
自動実装機で乗せたものが出てきた所を、部品のズレなどがないか目視して、その場で修正。
片面ずつハンダ付けが行われる。
光学式画像検査機。略称AOI。
パーツ回転やスタンド現象などのハンダ不良やパーツ無しなどを検査。
問題がなければ、可搬ラックに収納される。
BGAのハンダ検査はX線検査機にて行われる。
不良があった場合はできるだけ修正する方向。BGAのリワーク機でリワークする。
リワークは熟練された工員が行う。そばでBGAを交換する作業を見せてもらったが、周りにカプトンテープを貼って、上手にブロアーを扱っていた。
リード部品やコネクターなどの機構部品で、どうしても人の手を介さなければならない所は手差しパーツのラインで行われる。
まずはパーツの実装状態チェック。裏表行う。
このシートはポリエチレンぽい材質で下敷きの様な厚みがあった。画像処理検査をパスしているのに、なぜまたこれを使ってチェックするのかというと、可搬ラックなどで運ばれる際、ぶつけてパーツを壊したり、外れたりする事があり、欠かせない検査の一つである。このチェックはオフラインを行き交う全てで行われている。
ハンダ付けは、この様なハンダマスキング治具がある。材質はFRPぽいガラス繊維でできており、基板をロックするノブがついている。穴の開いた部分から噴流しているハンダが当たる仕組み。
セットして、コンデンサやコネクターなどの部品を手で載せていき、
最後にハンダ飛びやフラックス飛びから基板を保護するシリコンラバーを載せている。
噴流型はんだ槽に流れていく。下から霧状のフラックスが湿布されて、決められた温度プロファイルに従ってハンダ付けされる。
装置内部。噴水みたいに下から熱いハンダが噴流している。ここを通過してハンダ付けされる。
こういうハンダを通すので、ハンダブリッジ等が起きにくいパターンを作ったり、シルク印刷でハンダのヒゲが断ち切れるようにする等はノウハウの一つである。
ハンダが揚がって、冷却されながらコンベアで運ばれてくる。
この基板は面付けが2つ。ここで初めて割られて、シリアル番号が与えられる。以降はこのシリアル番号で不良や良品を管理される。
最後の目視検査。ハンダ状態、フラックス汚れ、ブリッジなどが無いかを確認。
まずは合格おめでとう。
こちらは不良品。リペアラインに戻されて修復が試みられる。
基板は更にファンクションテストが行われる。機能試験手順書に則って試験。
電気特性試験も行われる。手書きで針の位置が書いてあるが、作業指示書には、そのように書かれている。
稼働試験。電源をある一定時間投入して正常であるかをテストする。
ここまで工程が終われば後は箱詰め。フォークリフト用パレットの上に箱が置かれ、袋詰した基板を入れていく。
今回は初出荷なので、抜き取りによる受入検査を実施。私達の今回のミッションの一つ。
1年前にマレーシアで工場立ち上げに行った時の製品を中国に移管したものなので、大きなトラブルは無く無事に終了。
各エリアへの移動は、必ず金属探知機でボディチェックを受ける。私達も受ける。パーツを持ち出さないかのチェックが主である。監視カメラも至る所に配置されている。
キャリアで引かれた基板。
梱包装置。まずは紐で縛り、ターンテーブルにパレットを置いて、ラップのでっかいやつでぐるぐる回して梱包完了。
最近の電子機器は使用される時間が短く、すぐに捨てられたりしてしまうが、基板一つ実装して出荷するだけでもこれだけの人と設備が関わっている。これらの写真から、物づくりはこの様にして出来ているという事が少しでも伝われば幸いである。
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